危篤から臨終・納棺
■危篤
医師から危篤を告げられたら、家族や親族、友人など会わせたい人に至急連絡します。連絡する際には、だれが危篤状態なのか、場所(自宅、病院などの住所、電話番号など)、容態、いつ頃まで来てほしいかを伝えます。
本人が死期を悟るなどして何かを告げようとする場合があります。財産分与に関する話など重要なことならば必ず書き留めておきます。遺言書の法的な効力は書式でなければ有効にはなりません。遺言を口述筆記する場合は、遺産相続とは全く関係のない3人以上の証人が必要であり、本人の意識もはっきりしている場合でなければいけません。

■死亡の連絡
死亡した場合の連絡は、危篤を知らせた範囲、順序で通知していきます。知らせる範囲は、危篤のときよりも広くなりますが、親しくしている人にはすぐに連絡し、それ以外の人には通夜、葬儀など日程が決まり次第連絡してもいいでしょう。また、勤務先、仕事関係、友人、知人関係などは、各関係先の人へ連絡してそこから先への連絡をお願いしてもよいでしょう。
通夜などの日程が決まったら、故人の氏名、通夜、葬儀、告別式の日時と場所、喪主の氏名などを「訃報」として通知します。社葬などの場合は、葬儀までに時間があるので死亡通知状を出して知らせます。故人の付き合いが広い場合、要職にあった場合などには新聞に死亡広告を出して通知します。

■法的手続き
戸籍法では、人が死亡した場合には死亡届を提出することが決められています。死亡届の用紙は市区町村の役所の戸籍係、病院、葬儀社にあり、用紙左半分が「死亡届」、右半分は「死亡診断書(死体検案書)」となっています。
死亡診断書は医師に記入してもらい、事故死や自殺、他殺、不審死などの場合には警察の検視後に死体検案書が交付され、これが死亡診断書となります。遺族は左半分を記入し、死亡した日から7日以内に印鑑を持参して役所へ提出しなければいけません。
実際は、火葬などの関係から死亡した当日か翌日には提出しなければいけないため、葬儀社などが代行しておこなう場合が多いようです。
死亡届と同時に「死体火葬許可申請書」を提出し、「火葬許可証」を交付してもらいます。火葬場で火葬許可証を提出し、火葬後に「埋葬許可証」をもらいます。埋葬許可証は納骨時に必要となるほか、5年間の保存義務があります。

■寺などへの連絡
仏式、神式、キリスト教式など宗教によって葬儀のやり方も変わってきます。
仏教の場合、菩提寺への連絡は死亡が確認されたらなるべく早くし、相談します。故人の名前、死亡日時を伝え、通夜、葬儀の日時、場所などを相談します。また、仏名(戒名、法号、法名)をお願いし、戒名料などのお礼についても聞いておきます。宗派がわからないなどの場合は、葬儀社に相談しましょう。
神式の場合は、故人が氏子となっている神社に連絡して、通夜祭、葬儀祭について相談します。氏神がわからない場合は、葬儀社に相談しましょう。
キリスト教の場合は、危篤となった時点で意識があるうちに教会へ連絡します。神父または牧師によって臨終の儀式が行われます。臨終に立ち会えなかった場合は、死亡が確認されたらなるべく早く連絡します。



■遺体の処置・末期の水
「末期(まつご)の水」とは臨終直後に、居合わせた遺族、近親者が脱脂綿に水を含ませたものなどで亡くなった人の口元を湿らせること、「死水(しにみず)をとる」とも言われます。もう一度生き返ってほしいと願う気持ちと、あの世でも喉の渇きや飢えに苦しむことがないようにと願う意味があります。

■遺体の処置・湯灌
「湯灌(ゆかん)」とは末期の水の後、たらいにさかさ水(先に水を入れ、その後お湯を入れぬるま湯にする)を張って遺体を清めることです。
最近では、「清拭(せいしき)」が行われることが多いようです。病院で亡くなった場合は、看護師さんがアルコールに浸した脱脂綿などで体を拭き、汚物などが出ないように耳、鼻、口、肛門などに脱脂綿を詰める処置をしてくれます。自宅で亡くなった場合には、葬儀社が行うのが一般的です。

■遺体の処置・死化粧
遺体の処置が終わったら、髪を整えたり、ひげ剃り、薄化粧などをします。地方によっては亡くなった人にカミソリなど刃物をあてたり、死化粧を行わないところもあります。

■遺体の処置・死装束
遺体を安置する前に着替えをさせます。仏教の場合、僧尼の旅立ちの姿に似せた白木綿の経帷子(きょうかたびら)、手甲脚絆(てっこうきゃはん)、白足袋、わらじを左右逆に履かせ、三途(さんず)の川の渡し賃である六文銭の入った頭陀袋(ずだぶくろ)を首からさげ、手には数珠を持たせてます。
最近では、故人の愛用した衣服を着せ、葬儀社が用意した紙製の帷子を上からかけることが多いようです。

■遺体の安置
仏式と神式では、頭を北向きにする北枕に寝かせます。北枕にできない場合には、西方に極楽浄土があると言われていることから、西枕で寝かせてもよいと言われています。その他の宗教では方角は関係なく寝かせるようです。
薄い敷布団、掛布団を用意します。新しい布団がない場合は、シーツなどを新しい清潔なものにします。掛布団をかける際には上下逆にしてかけます。遺体は胸元で手を組ませて、仏式なら数珠をかけ、キリスト教ならロザリオをかけ、顔は白い布でおおいます。

■仏式の枕飾り
枕飾りは宗教、宗派によって飾り方が多少異なってきます。仏式の場合は、小机に白い布をかけます。必要な枕飾りは葬儀社が手配してくれますが、枕飯と枕だんごは遺族が用意します。
枕飯は、米一合をとがずに炊いて一粒も残さずに、故人が愛用していた茶碗に丸く山盛りにします。ご飯の真ん中に愛用していた箸を立てます。枕だんごは、上新粉でだんごを作り紙をしいた三方にのせて飾ります。線香立てには一本線香を立て、燭台には一本ロウソクを立て、どちらも絶やさないようにします。花台には、しきみを一本または菊の花を一本飾ります。コップまたは湯飲み入れた水、仏壇に置かれている鈴を飾ります。

■神式の枕飾り
案(あん)と呼ばれる8本足の白木の台の上に飾ります。案がない場合は小机に白い布をかけて代用します。一対の灯明、三方の上に水、洗米、塩、お神酒、常饌を供えます。常饌(じょうせん)とは日常の食事のことであり、故人の好んだ食べ物を選びます。神式では仏式と違い生ぐさものは禁じていないので魚や肉などでもかまいません。香はたかず、榊(さかき)が供えられます。枕元には守り刀として小刀を遺体に刃を向けないように置きます。

■キリスト教式の枕飾り
カトリックの場合、危篤になりまだ意識がある状態で神父をよび、「終油(しゅうゆ)の秘跡(ひせき)」の儀式を行います。プロテスタントの場合は、危篤になりまだ意識がある状態で牧師をよび、「正餐式(せいさんしき)」の儀式を行います。仏式、神式のような枕飾りの決まりはなく、子机に白または黒い布をかけ、ロウソク、聖書、十字架などを並べます。

■枕経・枕勤め
枕経とは、枕飾りができたら、僧侶により故人の枕元でお経をあげてもらうことです。遺族は、読経中は僧侶の後ろで枕勤めをします。枕勤めの時には喪服ではなく、平服でかまいません。

■納棺
枕経が終わった後に遺体を棺に納めます。死装束を着けた遺体を近親者の何人かで静かに動かします。葬儀社の指示に従ってあおむけに棺に入れ、経帷子をかけ、胸元で手を組ませ数珠を持たせます。故人の愛用品などを入れ、遺体の周りを生花で飾っていきます。棺の蓋をしたら、七条の袈裟(けさ)という金襴の布、白い布などで棺をおおいます。



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